2017年11月26日日曜日

観測隊/観測隊構成


 これを書いている時点で26日。すなわち明日にはもう出発です。
 そんなわけでアパートを引き払い、空港に比較的容易にアクセスできる(*1)場所に宿をとりました。
*1) 以前の記事で解説したようなしなかったような気がしますが、本隊はオーストラリアまで航空機で、そこから観測船「しらせ」に乗船して南極へと向かう。

森鴎外が『舞姫』を執筆した場所ということで「きっと歴史あるから古い建物なんだろうなぁ」とか思っていたらテレビもあるしWi-Fiも通っていたのであった*2)。きっと鴎外もTwitterで漱石とレスバトルしながら(*3)『舞姫』執筆していたのでしょう。
*2) 我が家より近代的だ。
*3) しかも引用ツイートで。

 南極に出発する直前であまり時間がなく、さて何を語っておくべきか考えたところ、観測隊の細かい構成・内訳を解説していないことに気付きました。というわけで今回は第59次南極地域観測隊(JARE59)の構成について書いておきたいと思います。

 以前に→スケジュールの記事で書きましたが、JARE59は、
  • 夏隊 - しらせに南極で来て、南極の夏である12-3月に滞在する(4ヶ月くらい)
  • 越冬隊 - しらせで南極に来て、12-翌年の3月まで滞在する(1年4ヶ月くらい)
  • 先遣隊 - DROMLANで南極に来て、DROMLANで帰る(4ヶ月くらい)
  • 海鷹丸 - 海鷹丸で夏に南極海で観測を行う(2ヶ月くらい)
に分類されるわけですが、それ以前に「隊員」と「同行者」に分類されます。この違いですが、隊員ではないのが同行者です……といってしまうと身も蓋もないのですが、主要メンバーが隊員で、それで足りない場合に派遣されているのが同行者といったところでしょうか。同行者の中には学生の方もいますが、隊員はみな隊員採用されているという点も違います(*4)。
*4) あんまり細かいところ書くと生臭くなるのでこのへんで。

 今回の第59次の参加者の内訳は、
  • 隊員 73名
    • うち越冬隊 32名
    • うち夏隊 41名
  • 同行者 26名
    • うち夏隊 21名
    • うち海鷹丸 5名

で、合計99名です。先遣隊が数に入っていないように見えますが、先遣隊は夏兼任だったり越冬兼任だったりしますので、夏か越冬のどちらかに含まれている(はず)です。
 99名とわりといい数なので、ひと昔前に流行った「世界がもし百人の村だったら」とかいうのを思い出しますね(*5)。
*5) 思い出さない? テメー平成生まれだな?

 越冬隊は、
  • 越冬隊長(観測隊副隊長) - 1
  • 観測部門 - 14
  • 設営部門 - 17
となっています。合計数が隊員33人になっていることからわかるとおり、越冬隊は全員が隊員です。
 見ての通り、越冬隊での人数比は観測<設営となっています。長い冬に包まれる越冬期間、基地の状態を維持する設営がいかに重要視されているかということがここからわかるかと思います。

 もう少し細かく見てみると、その内訳は
  • 越冬隊長 - 1
  • 観測部門
    • 基本観測・定常観測・気象 - 5
    • 基本観測・モニタリング観測・宙空圏 - 1
    • 基本観測・モニタリング観測・気水圏 - 1
    • 基本観測・モニタリング観測・地圏 - 1
    • 研究観測・重点 - 3
    • 研究観測・一般 - 3
  • 設営部門
    • 機械 - 6
    • 通信 - 1
    • 調理 - 2
    • 医療 - 2
    • 環境保全 - 1
    • 多目的アンテナ - 1
    • LAN・インテルサット - 1
    • 建築土木 - 1
    • 野外観測支援 - 1
    • 庶務・情報発信 - 1
となっています。

 観測部門の基本観測・研究観測の違いについては→研究観測のところでそちらをご覧ください。
 定常観測の「気象」に関しては気象庁関連の気象観測ということで比較的想像しやすいと思いますが、モニタリング観測の「気水圏」「地圏」「宙空圏」という表現は少々わかりにくいかもしれません。気水圏は主に大気や海、地圏はいわゆる地学領域、宙空圏は気水圏で見る大気よりももっと高い領域をターゲットとした基本観測だと考えてもらえればいいと思います。

 設営部門に関して見ると、機械が6人ともっとも多くなっていますが、発電機、雪上車、電気設備などそれぞれが異なる作業を担当しています。どれも欠けた場合は基地機能の維持が難しくなるため、重要です。
 通信、調理、医療などは名前から何をするかが概ねわかりやすいかと思います。ちなみに医療の2名というのは一見少ない数字に見えますが、実は各国の越冬隊(あるいは越冬をこなす基地)で見ると、医療担当が1人しかいない場合もあり、日本は多めに医療人数を振っているといえます。

 一方で夏隊ですが、隊員としては、
  • 夏隊長(観測隊隊長) - 1
  • 観測部門 - 30
    • 基本観測・定常観測 - 5
    • 基本観測・モニタリング観測 - 3
    • 研究観測・重点研究観測 - 10
    • 研究観測・一般研究観測 - 11
    • 研究観測・一般研究観測兼萌芽研究観測 - 1
  • 設営部門 - 10
    • 機械 - 3
    • 建築土木 - 4
    • 野外観測支援 - 1
    • 輸送 - 1
    • 庶務・情報発信 - 1
これに加え、同行者として、
  • 同行者 - 26
    • 教育関係者 - 2
    • 技術者 - 4
    • 研究者 - 3
    • 大学院生 - 8
    • 外国人研究者 - 2
    • 報道関係者 - 2
    • 海鷹丸 - 5

となっています。

 越冬隊とは違い、夏隊は研究部門の人間が設営の3倍*6)となっており、夏に多くの研究者が訪れることがわかります。また、同行者に教育関係者や報道関係者がいるというところも夏隊の大きな特徴です。
*6) これは赤い(*7)。
*7) 仮面も被っているかもわからん。

というわけでJARE59観測隊の構成でした。出発前にあと1回くらい更新できるといいなあ。

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Maira Gall