2019年4月29日月曜日

南極/南極までの遠さはどれくらい


「まだちょっとだけ続きます」と書いてから早一ヶ月、いかがお過ごしでしょうか。わたしは『アベンジャーズ/エンドゲーム』(*1)を観ていました。
*1) アメコミの二大柱のひとつ、マーベルによるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の集合作である『アベンジャーズ』シリーズ4作目。MCUとしては22作目。アベンジャーズという単語は作中では地球最強のスーパーヒーロー集団を指す。

 まだ上映中の映画にネタバレをするつもりはないので深くは語りませんが、今回はとにかくキャップ(*2)がかっこよかった。
*2) アベンジャーズ初代メンバーのひとりにしてBIG3、キャプテン・アメリカ。キャプテン(弱いほう)。肉体的にはわりとただ強いだけ(ホークアイよりはマシ)のにいちゃんといっても過言ではない。

 今回、いつも通りスチャラカ感溢れるアベンジャーズだったわけで、スチャラカするたびに映画館の会場の中でも失笑が溢れていたのですが、スチャラカスチャラカしている中で唯一観客から笑いではなく「おお」という小さな歓声が漏れたのがキャップがかっこよかったシーン。具体的にどうかっこいいかはきみの目で確かめてくれ!

 ネットの声では「MCUはすべて観てから」派と「とりあえず観ろ」派がいますが、個人的には「アベンジャーズシリーズ(と『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』)だけ観ておけばOK」派です。

 さて、平成が終わり、イチローが引退し、『氷と炎の歌』の続巻の情報はなく、『Mount & Blade II: Bannerlord』も発売されないまま、MCUもひとつの区切りとなったわけですが、あと一回でこのブログも終わりになると思います。
 終わったらAmazonプライムビデオで観た映画のレビューをするブログに切り替えてもいいのですが、そうすると際限がないのでやめておきます。

 これまで南極の魅力——は伝えてこなかったような気がするけれど、南極の、えっと、こう、アレとか、そういうアレをアレしてきた気がしますが、今回は南極については相応にわかってもらえただろいうということで、5Wではなく1Hの「どうやって南極に行くの?」ということで書いていきます。



どうすれば南極に行けるの?


 わたしが高校生の頃、OBの南極観測隊の人の講演を聞く機会がありました。これがきっかけになって、南極に行こうと舵を切り始めたのですが、そのときの話では、南極に行くための主たる方法はふたつで、

  1. 金持ちになる
  2. 研究者になる

ということでした。

 1の「金持ちになる」に関してですが、ツアーで探してみると100万円だとかそのあたりの価格で見つかります。どういうツアーなのかまでは見ていませんが、だいたいは南アメリカかアフリカ経由で南極半島(*3)に向かうルートではないかと思います。ツアーに参加するだけの金と余裕があるならば、問題なく南極に行けると思います。
*3) 経度0度方向を上にして南極大陸を俯瞰したとき、西南極の左上から突き出ている角のような部分。ちなみに昭和基地があるのは右上の東南極領域。


 一方で2の「研究者になる」に関して説明すると、たとえば59次の越冬隊で見てみるとわかりやすいですが、59次隊の32人中、研究を専門としている人間(学生含む)はわずかに5人。
 一見すると少ないように見えますが、職種分類別に見ると研究者の5人は人数比的にトップです。なぜなら、研究者以外の隊員は、各分野をたったひとりでこなすエキスパートであるがゆえ、ひとつの業務につきひとりずつしか存在しないからです。例外は気象、医者、調理くらいで、気象は5名、医者と調理は各2名だけ。それ以外は各分野に1名ずつという形になっています。

 例外的に、観測装置の保全や定常観測を行うモニタリング隊員はそれまでの経歴とはまったく関係ない仕事を行うという人が多いです。日本にいる間に南極で行う仕事の打ち合わせや訓練を行い、現地で仕事をします。
 59次越冬隊の3人のモニタリング隊員も、いずれも研究職とは関係ない仕事をしてきた人々ですが、現地では観測を行いました。しかしこちらはこちらで狭き門です。

 つまり、上に挙げた2をより詳細に述べるなら、「南極に行きたいなら研究者か気象庁職員になるのが人数的にはベストで、そうでなければ医者か調理関係者になるべきだがそちらのほうがだいぶ厳しい。それ以外だとかなり凄腕じゃないと無理」ということになります。



どうすれば研究者になれるの?


 わたしの場合、根本的に金を儲けることができない、お金持ちに向かない人間性だという自覚があったので研究者になったので、「研究者になる」というルートで説明します。ちなみに自分はそもそも研究者として大成したとはお世辞にも言えない人間なのですが、逆にいえばそういう人間でも行けるということでご了承ください。

 まず研究者になるためには博士になる必要があります。本当に博士号を取っておく必要があるのかどうかは定かではありませんが、まぁ腐るもんでもなし、取っておきましょう。
 さて、中世から近世であれば、研究者になれるのは金持ちのみというのが常識でした。研究は道楽だったのです。現代ではどうかといえば、300年前と比べればマシとはいえ、やはり金がかかるもの。金がかかるというか、出ていく一方だと困るわけで、しかし学士のときのようにバイトをするような余裕はなかなかありません。


 そこで取得したいのが奨学金、しかも貸与ではなく給付型の奨学金で、特にその中で勧めたいのが日本学術振興会の特別研究員。ぶっちゃけ今回の記事は、この特別研究員という制度を紹介するために書いたといっても過言ではないです(*4)。
*4) この過言ではないという表現をするときはたいてい過言だが、今回は本当に過言ではない。

 日本学術振興会(以下、学振)は研究の助成を行う独立行政法人で、一般的に世の中にまったく役に立たず企業から支援を受けようがない研究者はこの学振の世話になっていると言っても過言ではありません(*5)。
*5) これは過言。

 特別研究員というのは、その中でも博士課程の学生〜若手のポストドクターへの助成を行うために作られた制度で、簡単にいえばこの特別研究員というものに採用されると、

  • ・月あたり20万円(*6)の研究奨励金
  • ・年あたり最大で150万円(*6)の科研費

が貰えます。
*6) どちらもDC1、DC2の場合の金額。

 重要なのは、上の「研究奨励金」というもので、これは実質的な給料に相当します。つまり、研究に使わずに生活費等に充ててよいお金です。

 昨今(でもないが)、研究費の使い込みなどが発覚して研究費の私的利用に厳しいご時世で何事か、と思われるかもしれませんが、研究奨励費というのは本当にそういうお金で、要は「博士課程に進んだ学生がバイトとかせずに研究してくれや。これで美味いもんでも喰え」という目的のお金なのです。怪しくない! 怪しくないよ!(*7
*7) 怪しい。

 ちなみに科研費のほうはちゃんと研究に使わなければいけないお金です。私的利用するとなんかよくわからないおじさんとかに怒られるのではないかと思います。一度、「金を使った研究をすれば研究費で買って使い終わった金を換金して儲けられるのでは?」と真剣に話し合ったこともありますが、私用はしないでください。

 一律20万円なので家賃の高いところに住んでいる人にとっては厳しいかもしれませんが、一種の不労所得です。いや働いているんだけど。なんというかこう、ほとんど修士までの流れを変えずに研究していれば金が貰えるというアレです。報告書などは出す必要がありますが、申請して採択するまでの苦労に比べればまったく大変ではありません。
 書いててなんか怪しい勧誘に見えてきたけど、まったくそういうのではなくて、くそっ、この記事書いたから学振が金くれねぇかな。えっと、まぁわからなければ大学に進学してから教授とかに訊いてください。


 個人的には「学振の特別研究員に採択されるかどうか」が大きな分かれ目であると言えます。わたしは修士課程のときに就職活動をしていて内定を貰っていたのですが、特別研究員のDC1(修士2年の春に応募、博士1-3年の間採択)にも応募しており、もしこれが通ったら申し訳ないが受かっていたところをお断りして博士課程に進学しようと思っていました。
 結果的には落ちていて駄目じゃねぇか。いやまぁそれでも結局就職ごめんなさいして一年後、DC2(博士1年の春に応募、博士2-3年の間採択)なんとか通りました。特別研究員は応募して採択されない場合は業績/能力/計画の3要素に分けてどのような評価だったかが返ってきます。わたしの場合、業績部分が当時ほとんど何もなかったのでそこだけ異常に低くてアウトで、DC2のときはここを改善してなんとか通りましたオラッ! これでも喰らえッ!

 さて、では特別研究員に採択されるにはどうすればいいか、ということですが、これについては特にアドバイスはありません。わたし自身、採択率が高いわけじゃないし、大したアドバイスはできません。クソみたいな文章を量産することなら自信があるのだけれど。 

 大事なのは「特別研究員」という制度があるということを知っていることと、早めに準備しておくこと(前年の春に応募しなくてはなりません)、そして何より、研究室の先生が特別研究員応募に協力的であること。
 わたしの場合、学生時代のボス(教授)が鬼のように協力的な人で、何度も文書をチェックしてもらいました。もちろん文章を書くのも論文を出すのも自分自身なわけですが、実際に読んでもらうと違います。特に学生相手と研究者相手では違います。というのも、学振特別研究員の申請書のフォーマットは、研究者が応募する科学研究費助成事業(科研費)とかなり似通っているからです。何度も科研費に応募、採択している研究者であれば、一定のコツを心得ています。

 特別研究員に採択されたら、あとはまぁ適当に頑張ってください。
 博士課程終ったら就職ですが、これもよくわからねぇんだよなぁ。いや実際経験があるのだからわかっているべきだと思うのですが、自分の流れが一般的なのかどうかがわからないので説明が難しい。なんか求人とかあると思うので、履歴書とか書いて、で、こう、ガッとやればいいんだと思います。学部や修士の就職と異なり、博士の採用はわりと年度末ギリギリです。



極地研はどういうところなの?


 必ずしも国立極地研究所(以下、極地研)の研究者でなければ南極観測隊の研究者になれないというわけではないのですが、59次越冬隊の研究者5名は全員が極地研の研究者でした(正確には、うちひとりは総研大という極地研など複数の研究所が基盤となっている大学院の学生ですが)。


 だから、もし南極に興味があるのなら、極地研に来てみるのも悪くはないのかもしれません。まぁ来たところで見学案内とかないんだけど。

 東京都立川市にある極地研は、正確には「大学共同利用法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所」という名前で、現在の建物は統計数理研究所(統数研)・国文学研究資料館(国文研)という研究機関と共同で施設を利用しています。
 このうち国文研は1階で資料展示を行っているため、休館日以外でしたら見学できるのですが、極地研はというと一般公開する資料がないので、なんでもない日に来ても見るものがショーウインドウの中のコオリウオの標本やペンギンの剥製、野生の研究者くらいしかありません。


 そういうわけで、極地研を見学したいなら夏に行われる一般公開のときに来ていただければいいかと思います。
 それ以外だと、併設施設である南極・北極科学館があります。こちらは、

  • ・入場料無料
  • ・火〜土曜の10〜17時開館(入館は16時半まで)
  • ・日曜、月曜、祝日、年末年始、特別休館日は休館

となっています。日曜のほか、月曜も休館なのでご注意ください。
 ちなみに現在のゴールデンウィーク期間中ですが、ガッツリ休んでいます。ホワイト企業ゥ。いぇい。ゴールデンウィーク中だと、5/5の子どもの日のみ開館しているそうです。



北極南極科学館に行きたいけど、お父さん/お母さんが嫌がりそうなんだけど?


 お母さんはららぽーと立川立飛に行ってください。極地研最寄りの多摩モノレール高松駅のすぐ隣の駅にあり、歩いても行ける距離です。たまには運動してください。


 お父さんはIKEAにでも行っててください。好きやろ家具とかきみ。よく知らんが。
 家具が厭なら『アベンジャーズ/エンドゲーム』を見に行ってください。



立川で『アベンジャーズ/エンドゲーム』は観られるの?


 シネマシティで観られます。

 注意点として、シネマシティ映画館は2箇所あります。距離としては非常に近いため、間違えてもすぐに移動はできますが、予約する際はどちらかは確認しておくべきでしょう。






アベンジャーズでは誰が好きなの?


 ホークアイです。
 ところでホークアイで検索すると、検索候補が「ホークアイ アベンジャーズ いらない」「ホークアイ 弱い」「クソ雑魚弓おじさん」とかになるのどうにかなりませんか?

 二番目はファルコンだったんですが、エンドゲームまで観たいまとなってはキャップかもしれません。



ジャスティスリーグ/X-MENだと誰が好きなの?


 ジャスティスだとバットマンです。あの周りのヒーローが雑魚秒殺している間に、雑魚と頑張って戦っている弱さが良いのです。

 X-MENは、子どもの頃に駄菓子屋にマーベルの対戦格闘ゲーム躯体がありまして、そのときに棒を使うおじさんを使っていた記憶がありました。いま調べてみたら、ガンビットというヒーローだそうです。そんなことは関係なくサイロックです。



アメコミ映画は何が好きなの?


『アンブレイカブル』です。

 関係ないんですが、南極から帰るしらせの船の中で他隊員に「オススメの映画は?」と聞かれたときに素直に「シャマランの『サイン』」と答えたら翌日になって「貴重な2時間を無駄にした。5人で観たから合わせると10時間を浪費させられた」と言われました。しかしそのまた翌日に『最“狂”絶叫計画』を観てくれたおかげで「観ておいて良かった」と言われました。人生何が助けになるかわからんなほんま。

 本日は以上です。
© この星を守るため
Maira Gall